僕の還る場所

 

あつい。
奥村燐の首を掴んでみれば、奥村燐は必死に抵抗しながら炎を吹き上げた。父上と同じ、青い炎。僕は体中がどくどくどくと興奮するのを自覚していた。 腕を体を舐めるように青が走る。ああ、懐かしい熱さだと思った。燃えているというのに、僕は奥村燐と鼻先が当たりそうなぐらい顔を近づけた。牙をむき出して、 青く目を輝かせながら顔をゆがめる、末の弟。僕をそれを腕を回して抱きしめてみる。ぎくり、と肩が揺れた。そして戸惑う気配。炎がぬるくなってしまっていた。 この末の弟はやはりまだまだ甘い悪魔なんだ、と思った。奥村燐は自らに与えられた「悪魔の心臓」の意味も「青い炎」を継いだことの本当の意味も理解してはいない。 もし、いつか、理解する日がきたとして、その時奥村燐はどんな存在になるのだろうか。アスタロトの兄上が言ったように「創りだす存在」になるのだろうか。 でもあの時アスタロトの兄上は奥村燐が「何を創る存在」になるのかまでは言わなかった。それは神である僕達の父上にもわからないことだろう、と。 だからこそ面白いのかもしれないけれど。
果たして奥村燐を抱きとめならが、僕は何故こんなことをしているのか、奥村燐に対して何をこんなに考えているのか、僕自身わかっていなかった。
ただもしかしたら還れるかなあ、と思ったのだ。
意思を持つ前のものに戻りたいわけじゃない。今の生き方に飽いたとかそんなことじゃない。そんなことは僕達悪魔にとっては全て無意味だ。唯一、メフィスト・フェレスの兄上だけは違ったみたいだけど。
ただもしかしたら一つに戻れるんじゃないかなあ、と思ったのだ。
僕達悪魔はこの青い炎から生まれた。人でいうところの母親の腹の中というものと同義なんだろうか。いや、そんなに優しいものじゃないけど、でも奥村燐ならそうなんじゃないかと思ったのだ。
「ひとつになっちゃいましょうか?」
末の弟は盛大に顔をしかめてくれた。
彼はこの先、どうなっていくのだろうか、それを奥村燐の青い炎に還ってから見てみるのも面白いんじゃないかと思ったのだ。僕も酷く退屈には退屈していたのだから。



そこまで言ってしまってから、僕は思い出した。例えば、土に水を含んで何かの形を作って乾かしても、再び水をかけてしまえばそれは土に戻ってしまう。けれど、その土を炎で焼いてしまえば、 もうそれは水をかけても元には戻らないのだ。つまり、父上によって一度創り出された僕はもう戻れないし、奥村燐が噴出す炎には還れないということだ。ひとつにはなれない、ということだ。
なあんだ。そうなら、今燃え尽きるのはまだ惜しいかな、じゃあもうちょっと僕の本当は穴が開いているのだけの目玉で見てみるのも悪くないかも、と僕は生まれて初めて自分の命を惜しいと思ったので、奥村燐から離れた。離れる前に、口からも吹き出していた青い炎を食ってみた。 ごくん。それはひどくぬるく僕の喉と肺を焼いた。











2011.11.27 加筆修正
なんか書き加えていったらわけのわからん話になってしまいました。 燐がどうして炎を継いでどのように誕生したのかということをぶわわ!と考えてぶわわ!と書いてみたらこのザマです…雰囲気で読んでくだされ…orz