夢喰う炎 7

 

夜中の2時ぐらい…今、便所にこもってこれ書いてる…。た、タイヘンなことが起きたというか、 俺の頭の中でどう処理したらいいのかわからんことが起きたというか。

ゆ、雪男に…うわああ…書くのもはずかしというかもう信じられないんだけど…!
とりあえず、俺よ、落ち着け…。順を追って書いていこう。って雪男が起きだすといけないから、手短に書かないといけない。
俺、昨日、勝呂に全部を聞いたあと…雪男は特に「何話してたのか?」って聞いてはこなかったけど、「塾どうだった?」だけ聞かれて「楽しかったぜ、 べんきょーはわけわかんねえけど!」と 答えて(雪男は呆れかえっていた)…そのまま交代で風呂はいって。俺はけっこう疲れてたのか、頭ふいたらすぐにベッドで寝てしまったみたいだった。そんで、何時のことかはわからないんだけど、 寝ている俺に、雪男が、
「兄さん?」
って呼んできて…俺は、ああ呼ばれてるなあ、とは思ったけど、ほらあるじゃねえか、寝ているような状態になっていて、周りの誰がなにしてんのかぼんやりわかるけど、 頭と体が反応できない感じっていうの、あの時、俺はそんな感じになっていた。目も閉じてたけど、雪男が仰向けに寝ている俺の顔を上からおおいかぶさるように 見下ろしていたのが、なんとなーく、わかった。
「兄さん…」
もう一度、呼ばれたけど、俺は寝ているような状態だったから答えらんなかった。ただ、いやにさみしそうに俺のこと呼ぶな、って思ったから、 大丈夫だって、言ってやろうかと思ったときだ。
雪男は俺の髪をなでてきた。前と同じように、やさしくやさしく…手がすごく熱く感じたのは風呂から上がったからだけではなかったと思う。 俺はそれがともて気持ちよかった。とたん、眠りが本格的になりそうだった。雪男は今度は頬を撫でてきて、また、兄さん、って。

そのまま、おでこに何か当たったなあ…って思った時、くくくく、くちにも何か当たったなあ、って。

いや、確かに口に何か押し付けられるみたいに…でも、ふわっと少しだけだったけど…。かさついて、やわらかい…。

は、これって…!?

と俺は半分寝ぼけている状態で、それがなにかわかった。本当だったらここで飛び起きて雪男とおでこ、ごっつん、ってなってたんだろうけど、 何故か俺は動けなかった。起きることもしなかった。俺の中にある何かが、動くな、って命令しているみたいに。

雪男は…俺にキスしたんだ。

寝ぼけてはいたし、目も閉じたまんまだったけど、間違いないって。だって、雪男はそれから二回、さ、三回、と俺の口にかさついた雪男の唇あててきたんだから。 あの感触間違いねえというか…悲しいかな、俺はキスの経験なんてねーけど…(前の俺がどうだったかはわからねえけど)、さすがにそれぐらいはわかる。 だって、雪男はしっかり押し付けてきたんだから。計、四回…。俺は飛び起きて、ぎゃー!って叫ばなかった自分をほめてやりてえ…。 雪男をごまかせたかどうかはわかんねえけど…俺はとにかく寝たふりを決め込んだ。計、よんかいも寝ている(フリをした)俺にキスした雪男は、最後に おでこにかかっている髪を撫でてから離れたみたいで、その後、ごそごそ、シーツの音がしたから、寝たんだと、わかった。
俺は、寝たふりしながら、ずっと頭の中はこんがらがってた。
そんで…たぶん、一時間ぐらいたってから、そっと目を開けてみた。雪男のスペースを見れば、雪男は、布団をしっかりかぶって寝ていた。俺は、まだ、ちょっと混乱したまま、 思わず日記を手に取って、便所に行っていた。で、今、これ書いてる…。とにかく、書いて残さずにはいられないというか…朝起きて、夢だったのか、と思うかもしれねえし… とにかく落ち着きたかったから。
…冷静に考えてみなくても…兄弟でキスとか…ありえねえだろう…。
お、おでことかなら、まだセーフ?かもしれねえけど(いや、やっぱりアウトか?)、でも口にされたしなあ…。
ああー…そういえば、雪男がアルバム見せてくれて兄弟だと確かめ合ったときも、雪男は…きっとあの時も、キスしようとしたんじゃないだろうか…。兄弟だと 確かめあったあの場で?
そして、寝ている俺に、「双子の兄」に、キス?
…あー…もうわけわかんねえ…。雪男がわかんねえ…。なんで、兄にキスをする…。
…しかも、一番信じられねえのが…俺、確かにもう心ぞう止まるぐらいびっくりはしたけど……不思議と雪男にキスされたということが…い、いやじゃねえ? ああうん…いやじゃねえというか、嫌悪感みたいなのが、ない。いや、びっくりはしてるけど。こんせいき最大にびっくりだけど。
なんか変だ。 俺にキスした雪男も変だけど、起きずに雪男のキスを受けて、今現在、あまりいやじゃなかったかも、と思う俺も、変だ。

…勝呂に聞いたことといい、「俺達」変だ、おかしい。

兄弟でキスしちまったことだけじゃない、それ以外にも、色々、おかしい。
…俺、やっぱり、雪男としっかり話し合うべきだ。
よし、俺は決めたぞ。もう迷っている場合じゃない。これ以上、おかしな事態になる前に、俺達、話し合うべきだ。そして、以前の「俺達」 に何があったのか…雪男にしっかり聞くべきだ。
そろそろ、部屋に戻らねえと…雪男が俺がいないことに気付いちまうかもしれねえ。
…雪男、なんでおまえ「双子の兄」に…それどころか「悪魔」の俺なんかに…。











2011.6.19